ストーリーは単純そのもの。
旅の途中で知り合った性格の違う二人がお互いの目的地を目指して旅を続けるというもの。
アメリカ版野次喜多道中といったところか。
短気で喧嘩っ早く人を信じられない刑務所帰りのマックス(ジーン・ハックマン)と
陽気で繊細、ちょっと気の弱い船員くずれのライオン(アル・パチーノ)が
葉巻の火のやりとりで会話を交わし、二人旅が始まる。
マックスはピッツバーグで洗車の会社を始めるため、
ライオンはデトロイトで五年ぶりに妻に会うためである。
二人とも役者としてはすでに圧倒的な存在感があるので、
友情が深まっていく過程の演技は特筆に価する。

旅の途中でマックスが次々とトラブルを引き起こし、ライオンの陽気なノリで解決していくのだが、
デンバーにてマックスの妹を訪ねたときのトラブルは最悪だった。
警察沙汰になり刑務所で農作業をしながら短期の刑に服さなければならなくなる。
マックスにとっては再びのムショ暮らしだ。
一旦二人の仲は裂かれたが、ライオンに降りかかった災難(囚人に女役を強制されそうになった)を
きっかけに、より深い友情関係が成立していく。
出所してバーで飲んでいるときに、こりないマックスは喧嘩をしそうになる。
堪忍袋の尾を切ったライオンはそのバーから出て行こうとするが、
マックスが男性ストリップの真似事をして、ライオンを引きとめようとした。
マックスが始めておどけた役をするのだ。
マックスの頭の中には、以前ライオンに言われた言葉があった。
「かかし(スケアクロウ)はカラスを追っ払うためではない。カラスを笑わして楽しませようとしてるんだ。
カラスは楽しませてくれたお礼に、その畑を荒らすのをやめるんだ」
マックスはライオンと知り合う前には絶対に出来なかったことをやって
見事に「かかし」になったことをライオンに見せようとする。
ここの両者の演技が見物だ。いままでとは逆にマックスが下手に出ている。
ジーン・ハックマンの笑顔が眩しい。

再び共に旅を続けてライオンの妻と子ががいるというデトロイトにやってきた。
五年ぶりに妻に電話を入れたライオンは心無い妻の言葉に絶句して、
ショックのあまり精神に異常をきたしてしまう。
病院に担ぎ込まれたライオンに寄り添うジーン・ハックマンの演技も素晴らしい。
そこには人を信用せず喧嘩早いマックスの姿ではなく、このライオンのためだったら、
金を失ってもなんとかしてやるという、情のあるタフガイになっていた。

二人のヒッチハイクを撮影している様子。
右の車には監督とカメラが乗っている。
左の車の荷台にはジーン・ハックマンとアル・パチーノ。
シンプルな撮影が分かる風景だ。。

一人でピッツバーグに行くことになったマックス。
切符を買おうとするのだが、金が足りない。そこで、ブーツのかかとに
隠してあったとっておきの金を出す。なぜ、金が足りなかったか?
それは、再びライオンが入院しているデトロイトに戻ってくるつもりで
往復の切符を買ったからだ。

デトロイトで五年ぶりの妻に電話しようとするライオン。
マックスが喝を入れる。

マックスはピッツバーグで洗車会社をやろうとライオンにもちかける。
ジーン・ハックマンとアル・パチーノの演技がこの映画の中心だ。

病院のベッドからライオンをたたき起こそうするマックス。
連れて帰ると、医者にくってかかる。

ストリップの真似事をするマックス。笑顔がキュートだ。

どこか古臭く田舎臭い雰囲気を持ちつつヒューマニティー溢れるこの作品は、
せせこましい仕事で疲れたときに観る映画としてはうってつけだろう。二人の演技による余韻が残る。
ジーン・ハックマンの強烈な重ね着は印象に残り、男の着こなしとしても興味深いものがあった。
1973年にカンヌ国際映画パルム・ドール賞を受賞したことも付け加えたい。
監督はジェリー・シャッツバーグで1927年アメリカ生まれ。ファッション・カメラマンとして活躍中、
フェイ・ダナウェイと出会って恋に落ち、彼女主演の『ルーという女』で監督デビューした。
80年代以降も、『忍冬の花のように』など情感溢れる作品を発表している。

1973年アメリカ映画。

シンプルなオープニング。
アメリカの牧歌的雰囲気満点。

二人旅は続く。景色がきれい。

ライオンは元妻の嘘の告白で、精神に異常をきたしてしまう

刑務所に入所する二人。この後二人の仲は険悪になる。

マックスの重ね着が凄くて、かっこいい(笑)

マックスはどこに勤めてもすぐに喧嘩沙汰を起こし、追いだされる。

ライオンのまだ見ぬ子供へのプレゼントが忘れられる。
ちょっとしたキーワードだ。

スケアクロウ
アメリカンニューシネマの傑作だろう。何十年か前に観た覚えがあるのだが、全てうろ覚えだったので、
今回スッキリとした気分になった。ジーン・ハックマンの厚着の美学(笑)が印象に残っていただけだったのだ。
映像はSFXもなく、ストーリーにはひねりもない。ただジーン・ハックマンとアル・パチーノを中心とした
旅物語が淡々と続くだけだが、映画はこうあるべきという二人の演技が光り、観る者に魂の余韻を
残しながらエンドロールの流れを見ることができる。